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1)港湾局と建設局及び地方目治体の工事概念
調査結果をfig-2.に示す。海域や沿岸域における工事を実施する際、重要とされている点を港湾局と地方建設局及び自治体に分けて調査を行った。その結果、「安全性・強固性・防災性」といった国土保全が最も重要とされ、港湾局が11.1%、建設局が15.2%、自治体が13.8%であった。海域環境・生物に配慮した項目においては、港湾局と建設局及び自治体のそれぞれの立場や環境への配慮の傾向の違いが現れた。項目別にみると「工事中の海域汚染の最小化」は自治体が11.6%、港湾局が11.1%を示し、建設局では6.5%であった。「工事後の自然環境への影響の最小化」は港湾局が11.1%、自治体が9.3%を示し、建設局が6.5%であった。「生態系と調和する沿岸域の整備」は建設局が10.9%を示し、港湾局が8.9%、自治体が8.0%であった。「生物生息環境の創造」は港湾局が6.7%、建設局が6.5%を示し、自治体は3.1%であった。「工事により失われる自然を別の場所で復元」は、港湾局が4.4%を示し、建設局の2.2%、自治体の1.8%であった。「水質浄化への対応」は港湾局が8.9%を示し、自治体が3.6%、建設局か0.0%であった。
以上の結果より、自治体は工事中、工事後の影響を従来からある工法を利用して海洋環境や生態系に配慮し最小化することを重視していることがわかる。建設局は、開発行為と自然環境の保全が調和した事業を目指していることがわかる。港湾局は、ほぼ総ての項目において、他の団体よりも高い値を示し、沿岸環境保全に対して積極的な配慮をしていることがわかる。
2)沿岸域における事業の実施状況の把握
沿岸域における事業の実施状況を把握するため、過去5年間の沿岸域における実施または、着工、計画段階の事業の調査を行った。(fig-3.)
その結果、沿岸域における事業の実施状況は、実施、着工、計画段階の事業数は港湾局が90件、建設局で358件、自治体が1,706件あり、合計2,154件であった。これらの事業のうち、海域環境・生物に配慮した事業は港湾局で5件、港湾局での沿岸域整備事業内での割合は5.6%、同様に建設局で3件(0.8%)、自治体で18件(1.1%)であり、全団体では26件(1.2%)と低い値であった。しかし、海域環境・生物に配慮した事業を実施状況(fig-4.)でみると、建設局では実施数のみの回答であったが、全体での実施段階の事業は、11件(42.3%)、着工段階の事業は8件(30.8%)、計画段階の事業は7件(26.9%)と着工・計画段階の事業が57.7%も占めている。以上の結果から沿岸域整備事業は2,152件ある。その内海域環境・生物に配慮した事業は26件(1.2%)とまだ低い値であったが、事業全体の実施状況では着工・計画段階の事業が15件(57.7%)と半分以上を占めており、次第に海域環境・生物に配慮することへの認識が高まっていることがうかがえる。

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Fig-4.Circumstances of Environmentar Coastar Development Projects

5-2. ミチゲーションに対する認識の把握
1)ミチゲーションの重要性に対する認識

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Fig-5.Understanding the importance of Mitigation

ミチゲーションの重要性に対する認識の調査行った結果(fig-5.)、ミチゲーションの重要性について全団体で認識の違いはほとんどなく、港湾局と建設局及び自治体あわせて「非常に重要である」あるいは「重要である」と認識しているのは37団体(92.5%)と高い値を示した。その他の回答は、「どちらとも言えない」が2団体(5.0%)、「わからない」が1団体(2.5%)と、重要ではないと認識している団体はなかった。このことより、ミチゲーションの重要性については、十分理解されていることがわかった。
2)ミチゲーションの概念の導入について
調査結果をfig-6.に示す。ミチゲーションの概念を導入するにあたって「沿岸域全般に広く導入したい」は、地方自治体が6団体(19.4%)、建設局が3団体(42.9%)、港湾局では返答がなかった。

 

 

 

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